内部監査(ISO)の実施!オープニングから最終会議まで

今回は、内部監査の実施方法について解説していきます。

1.監査実施の概要

監査実施のプロセスは、様々な段階で行われ、組織内部のプロセスやプロシージャの遵守を確認するための手順が含まれます。以下は、監査実施の概要の主要な段階とそれぞれの実施内容です。

1. 準備:

監査計画と手順の確認

監査計画と手順、および監査プログラム(監査計画書)を確認し、監査の実施準備を整えます。

監査計画書についてこちらで解説しています。

内部監査チェックリストの確認

監査に使用する内部監査チェックリストを確認し、適切な質問や項目が含まれていることを確認します。

内部監査チェックリストについてこちらで解説しています。

内部監査手順の確認

内部監査手順、例えば「内部監査規定」など、監査の実施手順を確認します。

2. 実施:

内部監査実施のステップ
  1. 初回会議
  2. 情報の収集及び検証
  3. 監査所見(指摘事項)
  4. 最終会議

初回会議

監査チームと被監査者の間で初回会議を開催し、挨拶や連絡事項を共有します。

情報の収集及び検証

監査の実施中に、監査チェックリストに基づいて監査証拠を収集し、検証します。

監査所見(指摘事項)

収集した監査証拠を評価し、監査所見(指摘事項)を明らかにします。

最終会議

監査の最後に、監査チームと被監査者の間で最終会議を開催し、監査結果を共有します。監査所見(指摘事項)や必要な是正、予防、改善処置についても話し合います。

3. 報告:

監査報告書の作成

監査チームは監査所見(指摘事項)と監査結論をまとめた報告書を作成し、関係者に報告します。

このようなプロセスを通じて、監査チームは組織のプロセスやプロシージャの適合性を確認し、必要に応じて改善を提案します。監査報告書には、監査の結果と改善のための具体的な行動計画が含まれることが一般的です。

監査報告書の作成方法については下記の記事で解説しています。

2.初回会議(オープニング・ミーティング)

初回会議は、内部監査を開始するための重要なステップであり、以下のように進行されます。初回会議の参加者には、監査チーム、被監査者、必要な場合には経営層、管理責任者・食品安全チームリーダー、その他関係者が含まれます。

進行内容:

  1. 監査チームの紹介
  2. 被監査者の紹介
  3. 監査プログラムの確認
  4. 配慮事項、注意事項の確認
  5. その他必要事項

監査チームの紹介

監査チームリーダーおよび監査員が自己紹介を行い、彼らの役割と監査の目的を説明します。これにより、被監査者は誰が監査を実施するかを知ることができます。

被監査者の紹介

被監査者側からは、責任者や担当者の自己紹介を行います。被監査者の立場と役割を理解することが重要です。

監査プログラムの確認

監査チームは、監査プログラム(監査計画書)の内容を詳細に説明し、監査目的、監査範囲、スケジュール、監査方法などについて確認します。被監査者に対して、監査の進行についての明確な情報を提供します。

配慮事項、注意事項の確認

監査チームは、機密保持、セキュリティ、品質・食品安全管理、監査員の安全衛生など、配慮すべき事項や注意事項を被監査者に伝えます。必要な資源(案内人、パソコン、プロジェクター、移動手段など)も確認し、円滑な監査を実現します。

その他必要事項

その他、特別な要望や事項がある場合、初回会議でそれらについても議論し、合意します。例えば、特別なリスク、監査の焦点領域、重要な文書の提出などに関する事項です。

初回会議は、監査の透明性と円滑な進行を確保するために非常に重要な要素です。被監査者と監査チームとのコミュニケーションを促進し、監査の成功に向けた共通の理解を築くのに役立ちます。

3.監査の実施

3. 監査の実施- (1)監査証拠の収集

監査チームは、監査チェックリストを使用して、関連する情報を収集します。この情報は、監査基準と照らし合わせて検証可能である必要があり、監査証拠として採用されます。情報収集の方法として以下のものが一般的に使用されます。

  1. 責任者、従業員との面談
  2. 活動、周囲の作業環境及び作業条件の観察
  3. 文書類の確認
  4. 記録類の確認

責任者、従業員との面談

責任者や従業員との対話を通じて情報を収集します。質問を通じてプロセスや手順の詳細を理解し、監査証拠を収集します。面談内容はメモに記録されます。

活動、周囲の作業環境及び作業条件の観察

監査員は実際の作業現場を訪れ、活動や作業環境を観察します。この観察から得られた情報も監査証拠となります。

文書類の確認

目標、計画、手順、規格、仕様、指示事項などを示す文書類が監査証拠として使用されます。文書の内容が監査基準に適合しているか確認し、その結果を記録します。

記録類の確認

検査記録、議事録、報告書、測定の結果、分析結果など、過去の活動に関連する記録類が監査証拠として重要です。これらの記録を確認し、監査基準への適合性を確認します。監査員は、このプロセス中に詳細なメモを取ります。

これらの情報収集の方法を通じて、監査証拠を収集し、監査の結果をサポートするための具体的な情報を記録します。この情報は、監査結論を導くために使用され、監査報告書の根拠となります。

3. 監査の実施- (2)サンプリング

内部監査では、対象全体を調査することは難しいため、監査員は情報のサンプリングを行い、そのサンプルを評価してマネジメントシステムの適合性や問題点を判断します。監査証拠をサンプリングする際には、以下の点に注意が必要です。

  • 情報の選択
  • ランダムな選択
  • 問題判断のための増加
  • 予習

情報の選択

監査員は、監査証拠となる情報を選択します。どの情報が監査証拠として適しているかを検討し、関連する情報を選択します。

ランダムな選択

サンプリングはランダムに行われるべきです。偏った情報を選択することを避け、公平で客観的な評価を確保します。

問題判断のための増加

たまたま生じたミスや不具合がシステム上の問題なのかを判断するために、サンプリングの数を増やすことも考慮されます。増加したサンプルは、問題の本質を理解するのに役立ちます。

予習

効率的なサンプリングのために、監査員は事前に予習を行います。これはチェックリストを作成し、サンプリング対象を明確にし、監査証拠を収集する際の方針を確立するのに役立ちます。

サンプリングは、限られたリソースで効果的な監査を実行するための重要な手法です。適切なサンプリング方法を使用することで、監査員はマネジメントシステムの適合性を確認し、問題を特定するのに役立ちます。

3. 監査の実施- (3)監査コミュニケーション

内部監査の成功は、監査チームと被監査者の間での効果的なコミュニケーションに依存しています。以下は、監査コミュニケーションに関するいくつかのポイントです。

a) 監査員の心構え

基本の理解: 監査員は、内部監査の基本的な目的を理解する必要があります。これは、組織のマネジメントシステムとパフォーマンスを改善するための情報提供を含みます。監査員は、客観的な情報である監査証拠を収集し、監査基準と照らし合わせて評価する役割を果たします。

コミュニケーションスキル: 監査員はコミュニケーション技術を駆使して、被監査者とオープンで建設的な関係を築く必要があります。質問の意図を理解し、期待通りの回答を得るためにコミュニケーションスキルを発展させます。

b) コミュニケーション、質問の仕方

効果的な質問: “教えてください”や”見せてください”などの質問は、監査証拠を収集するために効果的に使用できます。質問を通じて情報を引き出します。

5W1H: 質問を構築する際に5W1H(誰が、いつ、どこで、なぜ、何を、どのように)を組み合わせることで、監査証拠に到達しやすくなります。

問題の処理: 問題を発見した場合、記録を取り、同意を得てから次に進むことが重要です。不適合事項についてしつこく話すのではなく、効果的に進行させます。

誘導尋問や推定の質問: 監査員は誘導尋問や推定の質問を避けるべきです。質問は客観的で明確であるべきです。

誉める: 効果的な運用が確認された場合、被監査者を誉めることは重要です。建設的なフィードバックは協力関係を促進します。

これらの指針に従うことで、監査コミュニケーションが円滑に進行し、内部監査の効果が最大限に引き出されるでしょう。

3. 監査の実施- (4)監査証拠は監査員が確認する

監査の過程で、監査証拠を得るために監査員が実施するべきアクションについて説明します。

  • 実地視察
  • 質問と証拠の照合

実地視察

事務所、職場、作業現場などで何が実際に行われているかを自分自身で目で確認します。これにより、物理的な証拠を収集し、実際の状況を理解することができます。

質問と証拠の照合

監査員は被監査者からの回答だけでなく、監査証拠によっても情報を確認します。被監査者が「はい、やっています」と回答した場合でも、それを確認するための具体的な証拠を収集する必要があります。回答が事実に基づいていることを確かめるために、書類、記録、証拠の提供を求めることが含まれます。

監査証拠の確認は、監査の信頼性と透明性を確保し、客観的な事実を収集するための重要なステップです。監査証拠は、監査結果の正確性と妥当性を保証するのに役立ちます。

3. 監査の実施- (5)監査所見の決定

監査所見(指摘事項)を決定するプロセスについて説明します。

  1. 監査証拠の評価
  2. 監査所見の定義
  3. 確認の取得
  4. 監査報告書への記録
  5. 監査所見の区分

監査証拠の評価

監査チームは収集した監査証拠を、監査基準に照らして評価します。この評価は、適合性または不適合性を判断するためのものであり、監査所見を形成するための基盤です。

監査所見の定義

監査結果を元に、適合または不適合に関する監査所見(指摘事項)を形成します。監査所見は、内部監査の主要な成果物であり、組織にとって改善の機会や問題点を示すものです。

確認の取得

監査所見が形成されたら、被監査者に対して確認を取ります。被監査者に対して、監査所見に同意してもらい、それについてのコメントや説明を収集します。被監査者の確認を得ることは、監査の透明性と公平性を確保する重要なステップです。

監査報告書への記録

監査所見(指摘事項)は、監査報告書にまとめて記録されます。監査報告書は、組織のマネジメントに提出され、改善のためのアクションプランの策定や実施に活用されます。

監査所見の区分

監査所見は、適合性や重要性に応じて区分されることがあります。一般的な区分には以下が含まれます。

不適合(重大または軽微な不適合性)

観察(改善の機会を示すが、不適合ではない)

提案(組織のパフォーマンス向上を促す提案)

優れた事例(成功事例やベストプラクティスの共有)

このような区分を使用することで、組織は監査所見をより効果的に管理し、改善プロセスを重点的に推進することができます。

3. 監査の実施- (6)メモ(記録)を取る

メモ(記録)の取り方

監査中に適切なメモを取ることは、監査証拠や監査所見を確実に記録し、後で報告書を作成するために非常に重要です。以下は、メモを取る際の重要なポイントです。

  1. 記録対象の詳細
  2. 監査証拠
  3. 監査所見(指摘事項)
  4. 調査が必要な事項
  5. 整理と分類
  6. タイムリーな記録
  7. 報告書作成への活用

記録対象の詳細

メモには、監査が行われている対象部署やプロセスの名前、関与した人の名前を記録します。これにより、後で情報を追跡しやすくなります。

監査証拠

収集した監査証拠に関する詳細な情報をメモに記録します。文書や記録の名前、版数、記録日などの情報が含まれます。また、製品、部品、設備、機器に関する情報も重要です。

監査所見(指摘事項)

監査中に発見した監査所見(指摘事項)の内容をメモに記録します。これらの所見は、後で報告書にまとめるために必要です。事実に基づいて客観的に記録しましょう。

調査が必要な事項

監査中に確認できない事項や、他の監査員や関係者と協議が必要な事項についてもメモに記録します。これらの事項を後で追跡し、必要な調査や検証を行います。

整理と分類

メモは整理され、分類されるべきです。たとえば、特定の部署やプロセスに関連する情報をまとめたり、監査所見と関連する証拠を結びつけたりすることが役立ちます。

タイムリーな記録

メモはできるだけタイムリーに記録されるべきです。監査が進行中にメモを取り忘れないように注意しましょう。

報告書作成への活用

メモは最終的な監査報告書を作成する際に貴重な情報源となります。記録された情報は詳細な報告書の基盤として活用されます。

適切なメモの取り方は、監査の透明性と品質を向上させ、監査プロセス全体の信頼性を高めるのに役立ちます。

3. 監査の実施- (7)監査実施中の連絡、協議

監査実施中に連絡と協議が必要とされる場合、監査チームリーダーは適切な措置を取り、監査プログラムの変更、または監査の中断・中止の決定をする責任があります。以下は、連絡と協議が必要な場合の一般的なケースです。

  1. 提供された文書や記録が不足
  2. 監査目的の達成が難しい場合
  3. 監査プログラムの通りに実施できない場合

提供された文書や記録が不足

監査が進行する中で、必要な文書や記録が提供されない場合、監査が適切に進行できない可能性があります。このような場合、監査チームリーダーは監査の責任者や被監査者と連絡を取り、追加の文書提供を要求するか、監査プログラムの変更を協議することが必要です。

監査目的の達成が難しい場合

監査が進行する中で、入手した監査証拠から監査目的を達成することが難しい場合、監査チームリーダーは責任者や被監査者と協議し、監査の方針やアプローチを再評価する必要があります。また、追加の情報収集や調査を検討することもあります。

監査プログラムの通りに実施できない場合

監査プログラム通りに監査を進行できない場合、監査チームリーダーは状況を評価し、責任者や被監査者と連絡を取り、プログラムの変更やスケジュールの調整を協議するでしょう。これにより、適切な対応が取られ、監査が効果的に進行することが確保されます。

連絡と協議は、監査プロセスの透明性と効果性を維持し、問題が早期に解決されるのに役立ちます。監査チームリーダーは、状況に応じて適切な判断を下し、必要なコミュニケーションを確保する役割を果たします。

3. 監査の実施- (8)被監査者の対応

内部監査において、被監査者の協力と積極的な対応は非常に重要です。監査が効果的で組織の改善に貢献するために、被監査者は以下のポイントに留意すべきです。

  1. 情報提供の積極性
  2. 全ての欠陥の報告
  3. ルールと手順書への意見表明

情報提供の積極性

被監査者は、監査チームに必要な情報を自発的に提供する姿勢を持つべきです。情報の提供が円滑に行われると、監査のスムーズな進行と効果的な証拠収集が可能となります。

全ての欠陥の報告

被監査者は、どんな小さな欠陥や問題点でも報告するべきです。不適合事項や指摘事項の報告によって、組織はその問題を解決し、プロセスやシステムの改善に取り組むことができます。

ルールと手順書への意見表明

被監査者は、ルールや手順書についての意見や改善提案を積極的に監査チームに伝えるべきです。これにより、ルールの不備や改善の機会が明らかになり、組織のプロセス向上に寄与します。

被監査者の協力と対応は、内部監査の成功に欠かせない要素です。組織内の問題を正確に把握し、改善策を実行するためには、被監査者と監査チームの協力とコミュニケーションが不可欠です。

4.最終会議(クロージング・ミーティング)

最終会議は内部監査の重要なフェーズであり、監査の成果を被監査者と共有し、改善策を提案するための場です。最終会議の準備と実施について以下のポイントに留意するべきです。

最終会議の準備:

  1. 監査所見の整理
  2. 是正/予防/改善処置の要求

監査所見の整理

監査チームは、メモや記録から収集した監査所見(指摘事項)を整理し、関連する情報と共にまとめます。監査所見の区分・格付け(不適合、観察・改善の機会、提案、優れた事例)を明確にします。

是正/予防/改善処置の要求

監査所見に基づいて、被監査者に対して是正、予防、または改善の処置を要求するための提案を事前に検討します。提出期限や実施計画などを決めます。

最終会議の実施:

  1. 謝意の表明
  2. 監査所見の報告と確認
  3. 是正/予防/改善処置の要求

謝意の表明

最終会議の冒頭で、被監査者への謝意を表明します。これは協力的な監査プロセスへの感謝の意を示すものです。

監査所見の報告と確認

監査チームは監査所見を被監査者に報告し、確認を得ます。被監査者は監査所見に対して認識を共有し、正確な情報を提供することが求められます。

是正/予防/改善処置の要求

監査所見に基づいて、是正、予防、または改善の処置を被監査者に要求します。具体的な提案や提出期限などを明示し、改善プロセスの開始をサポートします。

最終会議は協力とコミュニケーションの機会であり、組織のマネジメントシステムの改善に向けたステップを確立する重要な場です。監査チームと被監査者の協力が、組織の品質、安全性、効率性の向上に貢献します。

まとめ